日本のウェブアクセシビリティに足りない免除の審査

メモ

これは実験記事です。
内容自体は自分自身で考えていますが、文章の構成や言い回し等は LLM に指示したうえで任せています。
詳細記事: 【実験記事】 認知負荷の小さい記事を作りたかった with LLM

日本でウェブを実装していると、ウェブアクセシビリティはいつまでも「できればやったほうがいい」扱いのまま。個人の意識の問題に見えるが、EUと並べると、制度の作りの差が浮かび上がる。

結論

日本に足りないのは、免除を審査するしくみ。

理念を掲げた法律も技術基準も、日本にはすでにある。ただ、事業者が「過重な負担だ」と判断しても、その判断を外から審査する役がいない。EUでは、免除を主張する事業者が、その根拠を文書に残さなければならない。市場監視当局は、その主張を却下できる。日本の「過重な負担」には、どちらもない。

全体像

表1: 段階と要点
段階 要点
出そろった理念と技術基準 日本にも、理念を掲げた法律と国際水準の技術基準がある
残り続ける違反 それでも主要サイトのトップページの95.9%に違反が残る
自己申告のままの「準拠」 違反を外から問う役がなく、「準拠」の表明も自己申告のまま
免除に課される立証責任 自己申告を審査するしくみを、EUは免除の主張にまで備えている

1. 出そろった理念と技術基準

ウェブアクセシビリティの理念も技術基準も、日本にはすでにそろっている。

理念は、WAI(Web Accessibility Initiative=ウェブアクセシビリティを推進する国際プログラム)の設立(1997年)までさかのぼる。W3C(World Wide Web Consortium=ウェブの標準仕様を定める団体)は設立の発表に、ティム・バーナーズ=リーの言葉を添えた。ウェブの力は普遍性にあり、障害の有無にかかわらず誰もが使えることが本質だという。W3Cは今も、ウェブはハードウェア、ソフトウェア、言語、場所、能力を問わず動くよう設計されている、と説明している。理念はお題目で終わらず、仕様の設計にまで入り込んでいる。

日本の法制度も、層としては厚い。日本は障害者権利条約を批准し、障害者差別解消法を定めている。障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法(2022年施行)も加わった。同法は、情報の十分な取得と円滑な意思疎通を、障害のある人の社会参加に欠かせないものと位置づけている。デジタル庁も「誰一人取り残されない」を掲げている。

技術基準は、JIS X 8341-3:2016(JIS=日本産業規格)が担う。WCAG 2.0(Web Content Accessibility Guidelines=W3Cが定めるウェブアクセシビリティの指針)と同じ内容を、日本の規格として定めている。

2. 29年後も残る95.9%の違反

理念と技術基準がそろっても、主要サイトのほとんどは技術基準を満たしていない。

WebAIMが毎年公開している調査の2026年版では、上位100万サイトのトップページの95.9%に違反が見つかった。自動検出できるWCAG 2の適合レベルA・AAの違反を数えている。1ページあたりの違反の件数は、前年より増えている。数年続いた緩やかな改善は、反転した。

もっと重要なのは中身で、違反の96%を、長年顔ぶれの変わらないごく少数の種類が占めている。コントラスト不足は、デザインツールの上で確認できる。代替テキストは、画像が何を伝えているかを判断すれば書ける。フォームのラベルは、属性ひとつで付けられる。高度な技術も特別な予算も要らない項目が、この規模で残り続けている。

違反が残るかどうかを分けるのは、技術力でも予算でもない。設計・実装・公開前レビューのどこかで、誰かが問いを立てるかどうかにかかっている。

3. 自己申告のままの「準拠」

日本にはその問いを外から立てる役がおらず、「準拠」の表明も自己申告のまま通っている。

総務省が公共機関のサイトを調べたところ、48.8%のページにJIS X 8341-3:2016の適合レベルA・AAの違反が見つかった。市役所の公式サイトに限ると、違反のあるページは約3割になる。

総務省自身も、多数の違反を抱えたサイトが「問題がない(AA準拠している)」と公表していた事例を確認している(令和5年度調査)。

理念と実装がずれているのではない。ずれているのは、表明と実態。

4. 免除に立証責任を課すEU

自己申告を外から審査するしくみを、EUは免除の主張にまで備えている。日本との差は、義務か努力義務かだけではない。免除を主張する側に、立証責任を負わせるかどうかにある。

欧州アクセシビリティ法(EAA=European Accessibility Act)は、2025年6月28日に適用が始まった。形式は指令((EU)2019/882)で、適合の根拠には欧州の技術基準EN 301 549を使う。EN 301 549は、実質的にWCAG 2.1の適合レベルAAに相当する。

ただし、EAAにも免除はある。従業員10人未満の零細事業者は、サービスを提供する場合に限って適用外になる。根本的な変更を要する場合や、不均衡な負担となる場合の免除も認められている。指令なので、加盟国が国内法にしなければ効力を持たない。

違いはその先にある。免除を主張する事業者は、自ら評価を行い、文書に残す義務を負う。市場監視当局は、その主張を審査し、却下できる。評価は、製品やサービスが変わったときや、市場監視当局に求められたときに更新する。文書の有効期間は5年と決まっている。

公共機関のサイトには、別の指令((EU)2016/2102)がある。各国は、この指令のもとで監視機関・申立て経路・罰則を整えている。

日本の「過重な負担」には、この作りがない。判断するのも事業者、記録を残すかどうかも事業者で、それを見る第三者はいない。ここで比べているのは制度の設計で、制度が生んだ成果までは比べていない。

実装の強度をつくる観点で並べると、日本の欠けている場所が見えてくる。

表2: 日本の欠けている観点
観点 日本
1. 具体的な技術基準がある ◯
2. 免除の立証責任が事業者側にある ✕
3. 第三者が監視・審査する △(公共機関に限る・強制力なし)
4. 当事者が使える申立て経路がある ✕に近い

足りないのは1番目ではなく、2番目以降。

反証と補足

  1. 審査のしくみがあれば違反が減るとは、この記事では示せていない。先行する(EU)2016/2102には数年の運用実績があるが、95.9%にはEU域内のサイトも含まれている。 これを受けて、4章では成果ではなく制度の設計だけを比べた。審査のしくみが違反を減らすかどうかは、EU側の運用実績を追って、別に確かめたい。
  2. 日本の包括的なアプローチには利点がある。障害者差別解消法は原則としてすべての事業者を対象にし、対象外の事業者を置き去りにするEAAより広く網をかけている。 結論は変えない。対象の広さと、免除を審査するかどうかは別の軸で、広い対象のまま審査を足すこともできるから。
  3. 技術基準は最低限にすぎず、満たしても使いやすいとは限らない。WCAGの達成基準は、客観的に検証できることを条件に選ばれている。 結論は変えない。技術基準が最低限であるほど、「満たした」も「過重な負担だ」も、自己申告のままでは意味をなさなくなるから。
  4. どちらの数字も自動検出で数えていて、手動でしか判定できない達成基準を含めればさらに上がる。95.9%も48.8%も、上限ではなく下限にすぎない。 結論は変えない。数字が下限であれば、2章と3章が示した違反の多さは、むしろ強まる。

これから変わること / 変わらないこと

変わるのは、技術基準の分量。ISO/IEC 40500(WCAGを国際規格にしたもの)が、WCAG 2.2相当に更新された。これを受けて、WAIC(ウェブアクセシビリティ基盤委員会)がJIS X 8341-3の改正原案づくりを始めている。改正後は、適合レベルAAに必要な達成基準が現行の約1.4倍に増えると見られている。主に、モバイル・タッチ操作や、認知・学習の特性に関わる達成基準が加わる。検討が順調に進めば、改正は今年度中に公示される可能性がある(令和8年度内)。

技術基準は、もともと更新され続ける前提で作られている。今回の改正で、これまで手薄だった領域が埋まる。

変わらないのは、技術基準を守らせる側。技術基準が増えても、免除を主張した事業者に根拠を出させる手続きは増えない。日本に足りないのは、免除を審査するしくみ。

前提

参考資料

記事一覧に戻る